刻まれていた誇り
すべての人を裏切ったつもりだった。
また、前のように一人ぼっちになる覚悟だってできていた。......なのに、そこに一本の電話が入る。うるさい、と、私は無視した。結局君も同じなんだろう、かつての仲間......友人に、そんな思いをぶつけようとした。
けれど、彼は違った。
また、僕が歩き出せるように、沈みかけた私の手を握ろうとしてくれていた。
彼は、私が言うにはかなり不器用な人間だ。声も小さくて聞き取りにくいし、センスも人並みかそれ以下だろう。そんな彼を、私は友人のふりをして心の中でバカにしていた。しかし、不器用な彼は、真摯で......純粋な男だった。
私は......なんて愚かな人間だったのだろう?
なんて、つまらない人間だったのだろう。
この私の罪を書き記している今、なにか救われていくような、浄化されていくような気がする。
私の罪は、赦されるものではない。
しかし、彼の手を取ることは、今の私の義務だと思う。
あと少しだけ、こんな私に時間をください。
この沈む街並みの中で、涙をのませてください。