おきなぐさ

自分は、自分。他人とは絶対に違う。

 

私は、花弁が数枚もげた、一輪の花を握っていた。

かつては春を告げる、希望の花だった。

周りに咲いている花は、薔薇と、チューリップと、そして名も知らない美しい花たち。

なぜ、自分はこうも不甲斐ない生き方をしているのだろうか

猫背で、薄くて、まるで自信がなさそうな風貌をしていた。

私の周りには、不幸にも優秀な人材が軒並み揃っていた。私もその人員の一名だったはずだっだ。

しかし、私は優秀ではなかった。

それが、立ち末枯れる原因だったと気づくまで、およそ2年。苦しみ続けることになった。

 

花は、水をあげなければ枯れてしまう。

水の分量は、個人によって決まっているもので、幸い私は腐らせるほど水を持て余していなかった。

しかし、水の量は決して平等ではなく

あちらの方が良質な水なのではないか、とのぞき込んでしまう。

そうして、私の持てる水かさは隙間からこぼれ落ちてゆく。

数本の集合知が、まるで巨大な植物の様に見えて、怯えてしまった。

 

私の花弁は、枯れてしまった。

枯れた花のりんぷんは、幻覚を誘発する

巨大な植物が、養分を全て奪い去りにくる。

”花壇の中で”そう呟いていた

尤も、私は花壇の中にいるとは気が付いていなかった。

ここは、広大な草原。

 

タンポポに出会った。

黄色く、健気で、決して綺麗とは言えないが、美しかった。

そこに、小鳥がさえずり、やってくる。

彼には、彼の役割があって...自分にも、きっとそれがあるのかもしれない。

他の何かには代えがたい、そんなものがある。

まだ理解はできないが、すべての花は「特別な花」で、それぞれ茎をのばして、思うように咲き誇っていいのかもしれない。

 

でも、私はそういう生き方を選ばないと決めた。

自らの葉で、退(の)けた。

私の生涯に、花弁は、必要ない。

とにかく、私は精一杯生きることにした。

私は、今、美しく生きているだろうか?

長い銀髭を伸ばして、一茎の私を、生きているだろうか。

ときおり、考えもする。

しかし、彼花の様に、等身大の未来を受け入れ続けることができないのなら......

いつまでも...春は巡ってこない。

 

『おきなぐさ』

自分自身を生きる花