おきなぐさ
自分は、自分。他人とは絶対に違う。
春
私は、花弁が数枚もげた、一輪の花を握っていた。
かつては春を告げる、希望の花だった。
周りに咲いている花は、薔薇と、チューリップと、そして名も知らない美しい花たち。
なぜ、自分はこうも不甲斐ない生き方をしているのだろうか
猫背で、薄くて、まるで自信がなさそうな風貌をしていた。
私の周りには、不幸にも優秀な人材が軒並み揃っていた。私もその人員の一名だったはずだっだ。
しかし、私は優秀ではなかった。
それが、立ち末枯れる原因だったと気づくまで、およそ2年。苦しみ続けることになった。
夏
花は、水をあげなければ枯れてしまう。
水の分量は、個人によって決まっているもので、幸い私は腐らせるほど水を持て余していなかった。
しかし、水の量は決して平等ではなく
あちらの方が良質な水なのではないか、とのぞき込んでしまう。
そうして、私の持てる水かさは隙間からこぼれ落ちてゆく。
数本の集合知が、まるで巨大な植物の様に見えて、怯えてしまった。
秋
私の花弁は、枯れてしまった。
枯れた花のりんぷんは、幻覚を誘発する
巨大な植物が、養分を全て奪い去りにくる。
”花壇の中で”そう呟いていた
尤も、私は花壇の中にいるとは気が付いていなかった。
ここは、広大な草原。
冬
タンポポに出会った。
黄色く、健気で、決して綺麗とは言えないが、美しかった。
そこに、小鳥がさえずり、やってくる。
彼には、彼の役割があって...自分にも、きっとそれがあるのかもしれない。
他の何かには代えがたい、そんなものがある。
まだ理解はできないが、すべての花は「特別な花」で、それぞれ茎をのばして、思うように咲き誇っていいのかもしれない。
でも、私はそういう生き方を選ばないと決めた。
自らの葉で、退(の)けた。
私の生涯に、花弁は、必要ない。
とにかく、私は精一杯生きることにした。
私は、今、美しく生きているだろうか?
長い銀髭を伸ばして、一茎の私を、生きているだろうか。
ときおり、考えもする。
しかし、彼花の様に、等身大の未来を受け入れ続けることができないのなら......
いつまでも...春は巡ってこない。
『おきなぐさ』
自分自身を生きる花