はばたき
鳥が滑空からはばたきへと進化を遂げたように、私も進化の余地を提示された。
空を飛べない鳥は、群れから外される。偶然にも、私はそういう状況にあるらしい。
ただひとつ違うことが_____「はばたき」に先駆けがいることだろう。
私は、知らなかった。はばたくことの辛さを。そして、滑空している群れから逸脱し、はばたくということの難しさを。
うまく飛べない。今まで積み上げてきた痛みが、邪魔をする。
いいや、飛んでみせるんだ。かつて群れだった鳥が、僕を嗤う。
「おまえは最低のゴミクズだ」
_____否定はしない。しかし、今は飛ぶのに精一杯で、下の鳥ですらない何かに構っている暇はなかった。
私を嘲笑う者よ、聞け!私は、はばたく。
もう存在しない思い出を、握りしめて。
力いっぱい口を嚙みしめ、罵倒に耐える。ここで弱さを見せてしまったら、あの島に逆戻りだ。逆風に負けることなく、孤独に、ただ孤独に戦う。
もう、かつての私ではない。弱く、依存していた私ではない。
笑われるということは、成長の証だ。
笑われないものは、新しいものではない。
彼らの嘲笑は、私の努力の証明でもあった。
冬の冷たい風にさらされ、涙が溢れそうになる。
少し高度が落ち、目をつむってしまう。脳裏に、痛みがフラッシュバックしただろう。
でも、それでいい。挑戦というのは、継続することに他ならないのだ。
嫌われてもいい、ひとりぼっちになってしまってもいい。
夜の寂しさがひどく苦しく、投げ出してしまうことだってあるだろう。
人生を変えられるのは、成長し続ける意志のある者だけなのだ。
挑戦し続ければ、成長し続けられる。
逆に、挑戦をしなければ、人生を諦めることになる。
人生を諦めた者は、他者を笑うことしかできなくなる。
そんな者を、私は人間とは呼びたくない。
すべてが無駄だということなど、決して存在しない。
_____夜が明ける。高い場所から見る景色は、美しく、素晴らしい。
私はそれを「ソーダフロート」みたいだと思った。
空は、美しい。
知っているようで、知らなかった。
空が美しいというのは、誰もが知っているから。
でも、今この景色の美しさは、私にしか理解できないのだ。
それが新鮮で、楽しくて、生きたくてたまらなかった。
もう、この呪縛は捨てられるんだ。
私は、まだ飛んでいるというにはぎこちないが、少しだけでも「はばたけた」。
今はそれだけでいいのだ。いつかきっと、誰かの憧れを紡ぐだろうから。
薄明が告げる今日を、私は生きてゆく。